懐かしの名作西部劇5選
1.クイック&デッド(The Quick & The Dead)1995年
<監督>
サム・ライミ
<出演>
シャロン・ストーン(エレン)
ラッセル・クロウ(コート)
ジーン・ハックマン(へロッド)
レオナルド・ディカプリオ(キッド)
あらすじ.復讐の為にへロッドに挑むエレン(シャロン・ストーン)
女ガンマンのエレン(シャロン・ストーン)は、荒野の開拓地を恐怖で支配しているへロッド(ジーン・ハックマン)が主催する早撃ち大会に参加する。
その大会には賞金を目当てに各地の荒くれ者が集まる。皆腕に自信のある者達でエレンの他にへロッドの息子のキッド(レオナルド・ディカプリオ)、拘束されている牧師コート(ラッセル・クロウ)、そして暴君へロッドである。
エレンは女である事でいろいろな嫌がらせを受けるが、それを彼女は強い態度ではねのけ男達を黙らせ大会へと向かう。
へロッドに強い恨みを抱くエレンは特別な思いでこの大会に向かっていくが、へロッドの異常な強さと大会の異様な雰囲気にエレンは心が折れそうになるが、コートやキッドの支えもあり大会の初戦へと挑む。
みどころ.シャロン演じるクールな女エレンと曲者達が織りなす西部の物語
この映画は西部劇には珍しく女性のガンマンが主役の映画です。
復讐の為に荒くれ者たちとの対決に挑むシャロン演じるエレンが、男達をあしらう姿はとてもクールです。
女である事を出さずに一人のガンマンとして立ち振る舞う姿は、他の映画の男性ガンマンと比べても遜色がないです。
そしてエレンを取り巻く男たちも個性的で、特にジーン・ハックマン演じるへロッドの存在感は特別で圧倒的な強さと凶暴さはエレンのクールさを凌駕する位です。
へロッドの息子キッド(ディカプリオ)も父を特別視し自分を鼓舞するように自身に満ちた男が描かれています。

●ヘロッド(ジーン・ハックマン)の策略にはまるコート(ラッセル・クロウ)
コート(ラッセル・クロウ)は自分の犯した罪に苦しみながらも、へロッドの策略により闘いを義務付けられます。
そしてその三人以外にも個性的な男達と絡む事により、エレンの感情の変化がストーリーの進行と共に描かれ映画をさらに面白くします。
対決シーンは、時間をかけ丁寧に描かれるのでより楽しめます。
荒野のさびれた感じもうまく表現できていて新しい映画なのですが、懐かしくもあります。
途中エレンがドレスアップした姿になるのですが、こちらも魅力的で男臭い映画の中で清涼剤のような感じもいいです。
TIPS.無名時代のディカプリオが出演
この映画の最大の見所は豪華出演者の共演です。
主役のシャロン・ストーンとジーン・ハックマンはこの時すでに有名でありましたが、無名のディカプリオやラッセル・クロウなどこの映画をきっかけにスターへの階段を昇りました。
特にディカプリオは制作に参加したシャロン・ストーンの熱心な説得にて出演しました。
2.許されざる者(Unforgiven)1992年
<監督>
クリント・イーストウッド
<出演>
クリント・イーストウッド(マーニー)
ジーン・ハックマン(リトルビル)
モーガン・フリーマン(ネッド)
ジェームス・ヴェット(キッド)
アンナ・トムソン(デライラ)
あらすじ.昔の罪をぬぐえない男と町を守る為に手段を選ばない男
ロッキー山脈の近くにある町ビッグウィスキーで娼婦と客の間にいざこざがあり、娼婦のデライラ(アンナ・トムソン)の顔に傷をつけたクイックとデービー・ボーイに娼婦仲間達は懸賞金を懸け敵討をガンマンに委ねる。たくさんのガンマンがその懸賞金を狙いビッグウィスキーに向かう。
その話は、かつて列車強盗などを犯し今は足を洗い田舎で苦労しているマーニー(イーストウッド)の耳にも届いていた。
気が乗らないマーニーを、キッド(ジェームズ・ヴェット)と名乗る男が説得し昔の仲間ネッド(モーガン・フリーマン)を連れ町を目指す。
町には悪名高いイングリッシュボブなどが集まるが、保安官リトルビル(ジーン・ハックマン)はリンチ同然に彼等を見せしめに叩きのめす。
そして町に入ったマーニーも叩きのめされ、キッドとネッド達に助けられて命からがら逃げる。
そんな中、彼等の前にクイック達が現れる。
みどころ.寡黙なマーニーと完璧ではない男達
この映画の見どころは、完璧でない人間達の描写にあります。この映画に完全なヒーローは存在しません。
馬に乗るのもやっとで昔の面影がおぼろなマーニー(イーストウッド)や、賞金がかかった人が目の前にいるのにそれを撃てないネッド(モーガン・フリーマン)、自分の目の前に目指すべき敵が無防備でいるのに躊躇してしまうキッド(ジェームズ・ヴェット)。
みんなそれぞれ初めは自意識過剰に見せ、それが逆にこのような場面では躊躇し二の足を踏んでしまいます。
保安官リトルビル(ジーン・ハックマン)も自分の町を守ると言い、イングリッシュ・ボブに言い掛りをつけリンチし、ネッドを鞭で打ちと悪役として魅せたかと思うと、家を自分で作るなどのどかな所を見せます。
その様子が娼婦達がいてさびれた西部の町と妙にマッチしていて、映画の雰囲気作りに役だっています。不揃いの男達はどこか滑稽でいて素直に自分に生きているとも思えます。
そして周りが過剰に騒ぐ中、一人クールなマーニー(イーストウッド)の姿が印象的で、娼婦達の為だけに動く愚直な姿勢が特に印象に残ります。伝説的な悪党である事に罪を感じながらも、正義の為に愚かなまでに行動する姿はある種の魅力を感じます。
それとは対照的に、傷つけられた娼婦デライラ(アンナ・トムソン)との会話は何かおかしくもありますが、マーニーの誠実さが特に溢れています。
また、広大なアメリカの土地と夕焼けのコントラストはスケール感があり見応えがあります。
TIPS.イーストウッドの映画にかける想い
この作品を最後の西部劇として挑んだイーストウッドは、映画を作るにあたり役と同じ年齢になるまで待つほどこの映画にかけているだけあり、すごく役に入りきっています。監督も兼任した彼は師匠に奉げる最後の西部劇としています。
この作品はアカデミー賞も受賞し、後に渡辺謙主演で日本でリメイクされました。
3.明日に向かって撃て 1970年
<監督>
ジョージ・ロイ・ヒル
<出演>
ポール・ニューマン(ブッチ)
ロバート・レッドフォード(キッド)
キャサリン・ロス(エッタ)
あらすじ.伝説の二人が繰り広げる破滅への道
1890年代の西部に有名な荒くれ者ブッチ(ポール・ニューマン)とキッド(ロバート・レッドフォード)は家畜泥棒や列車強盗を繰り広げては各地を逃げ回っていた。頭脳明晰なブッチと早撃ちのキッドの無敵のコンビであった。
ある日、ブッチとキッドはとある二人組から誘われ列車強盗を試みる。そこでうまく大金を手に入れたブッチとキッドだが、鉄道会社は二人を捕まえる為に刺客を差し向ける。
一度は逃げ延びた二人だが、追手は執拗に二人を追い詰める。そこで二人は南米ボリビアを目指す。
みどころ.追い詰められる二人しかし前向きに生きる二人
実在したブッチとキッドを描いたこの映画は、名作と呼ばれるにふさわしい映画です。
この映画は二人のやり取りが映画を支えます。
二人は稀代の悪党として悪名を轟かせました。列車強盗や窃盗など、あらゆる悪事を繰り広げます。
そして、警察や刺客に追われ逃げ場がなくなるのですが、それを楽しむように逃げ回ります。
しかし、次第に逃げる場所もなくなっていきます。
一時はやり直す決意をするのですが、うまくいかず元の道に戻り破滅へと進みます。
うまくいかない、逃げ切れない事が分かっているのに明るくポジティブに逃げる二人。
愚かなのかもしれませんが、自分勝手な理由で行動する二人は無邪気な子供なのかもしれません。
冒頭のセピアでのシーンや途中で流れる二人のモノクロの早回しなど、少し凝った演出も楽しく映画の色付けをしてくれます。
途中、自転車を使い恋人とじゃれるブッチ(ポール・ニューマン)とエッタ(キャサリン・ロス)の姿は、のどかさを醸し出しノスタルジーを感じます。のどかな光景が繰り広げられ他の場面とのギャップがいいです。
TIPS.二人の主人公は実在した悪党
実在した二人の悪党をポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが演じます。
この映画は史実に限りなく近づけています。このような英雄伝によくある生存説もあったそうです。
主題歌のBJトーマスの「雨にぬれても」は大ヒットし、今でもこの曲と共にこの映画は親しまれています。
また、ポールは無名のロバートをスティーブ・マックィーンの代役として推薦して、この共演が決まりました。
4.荒野の用心棒 1965年
<監督>
セルジオ・レオーネ
<出演>
クリント・イーストウッド(ジョー)
ジャン・マリア・ヴォロンテ(ラモン)
ホセ・カルヴェ(シルバニア)
マリアンネ・コッホ(マリソル)
あらすじ.腐敗した町を名もなき男が救う
メキシコ国境近くのサン・ミゲルという町に流れ者のジョー(イーストウッド)は辿り着く。
酒屋のシルバニア(ホセ・カルヴェ)から、この町は保安官バクスターとドンミゲルの二つの勢力の縄張り争いが激化していて、暴力と恐怖で支配されていることを知る。
そんな中ジョーは早撃ちで瞬く間にバクスターの手下を倒し、その腕を見込まれミゲルの手下に雇われる。
しかしミゲルの息子ラモン(ジャン・マリア・ヴォロンテ)が帰ってくると状況は一変し、ジョーはミゲルの元を離れシルバニアの所で世話になる。そんな中二人は国境近くの銃撃戦を目撃する。そこで目にしたのは、ラモンが銃撃戦を偽装して金品を盗む所だった。
その中で、ジョーはラモンの愛人となっていたマリソル(マリアンネ・コッホ)を助け出すが、ラモンはバクスターの息子を捕え交換を要求してきた。
みどころ.寡黙な男が魅せる強さ
ジョー(イーストウッド)は寡黙な男です。そして何事にも動じず一瞬の油断もなく敵を倒します。
圧倒的な強さを見せ敵に容赦はしません。そして孤独で寡黙です。劇中のセリフも少なく雄弁ではありません。
それがまた、ジョーの強さと逞しさを引き立てます。
しかし男の優しさは忘れていません。弱い者には無償の優しさを注ぎます。それが本当の男なんだと言わんばかりに。
信念の為には大きな敵にも立ち向かう。それが大きな敵だと分かっていても信念を貫く。
バクスターとドンミゲルは卑劣で弱い者には容赦がないです。それが我慢できず彼らに立ち向かう男ジョー、それは弱き者には優しさをという気持ちなのでしょう。
自分が流れ者だという事を自覚してあまり人の事情に深入りしない、それもジョーの良さなのかもしれません。
また、ジョーのファッションも時代遅れなおしゃれとは程遠い服装ですが、それが似合っていて拘りを感じます。またメキシコ国境近くを舞台としているので、他の出演者のファッションも独特でちょっと新鮮な感じがします。
TIPS.東宝から訴えられる
この映画は、黒澤作品の「用心棒」を非公式にリメイクしたとされ、映画公開後に関係者より訴えられ敗訴するという事態が起こりました。しかし、この作品はクリント・イーストウッドの出世作であり西部劇の新しい形となりました。
この後、夕日のガンマンと続夕日のガンマンと立て続けにヒットし、彼はスターの道を進みます。
また数年後、イーストウッドは黒澤監督に会った際に感謝を述べたそうです。
5.駅馬車(Stagecoach) 1940
<監督>
ジョン・フォード
<出演>
ジョン・ウェイン(リンゴ)
トーマス・ミッチェル(ブーン)
ジョージ・バンクロフト(カーリー)
ルイーズ・ブラット(ルーシー)
あらすじ.乗客たちのいろいろな思いを乗せ駅馬車は走る
アリゾナからニューメキシコへ向かう駅馬車は、いろいろな人達を乗せ出発する。
しかし、アパッチ(アメリカ・インディアン部族の総称)が居住区を出たという不穏な情報もあった。乗客は7名でアルコール中毒の医者ブーン(トーマス・ミッチェル)、夫に会いに行くルーシー(ルイーズ・ブラット)、マロリー夫人とそのボディガード、保安官カーリー(ジョージ・バンクロフト)、娼婦や酒商人、賭博師など一癖ありそうな面々です。
途中で銀行家のヘンリーとライフルを抱えた脱獄囚のリンゴ(ジョン・ウェイン)を乗せ旅を続けます。
リンゴはブラマー兄弟への復讐の為にこの駅馬車に乗りローズパークを目指していたのですが、それは危険と判断したカーリーは彼を逮捕する。
乗客同士で揉める中、最初の到着地アパッチウェールズに到着する。
護衛がない上にアパッチ族が出たという情報もあり、このままローズパークは危険だという意見も出る中、乗客の多数決をとる事になる。
皆それぞれの都合を押し並べ、危険を承知でローズパークに向かう決断をする。
みどころ.スリリングなタッチの中での人間ドラマ
駅馬車に乗ったのは、リンゴ(ジョン・ウェイン)を含め9人です。
皆それぞれの思惑のなかローズパークを目指します。そこに皆の目的があるからです。
アパッチ族の襲来を恐れながらも9人は目的地に向かいます。初めは互いを気遣う事もなくただ淡々と目的地へと向かいます。
ぎこちない乗客は互いを牽制しあい、不穏な空気の中馬車は更に荒野を進みます。安全な道のりでなく、いくつもの困難を乗り越えていきます。
しかしルーシー(ルイーズ・ブラット)の出産をブーン(トーマス・ミッチェル)が手伝い、それをみんなが見守る中で乗客同士の絆が深まり、アパッチ族が襲撃しても皆で協力するという意気込みが見えてきます。
広く荒れた荒野を走る駅馬車はレトロチックで、今のカーチェイスなどに比べれば迫力は違うかもしれませんが、スリリングな展開で見る者を引き付けます。アパッチ族とのチェイスは、特にスリリングさが際立ちます。
今は珍しいモノクロの映画ですが、リンゴ(ジョン・ウェイン)の格好良さがこのモノクロの中で特に際立ち、出演者達も色褪せる事無く輝いています。
TIPS.ジョン・ウェインの転機となった作品
名優ジョン・ウェイン(リンゴ役)と名監督ジョン・フォードが組んだ西部劇の名作です。長く不遇の時代を過ごしたジョン・ウェインにとっては、ジョン・フォードに抜擢されスターとなった節目の映画でもあります。