読むだけで見たつもりになれる「北野映画」ベスト11

今回は、今からでも遅くない、読んだだけで見たつもりになれる「キタノ映画」の紹介です。「アウトレイジ」のようなヒット作から、映画ファンから根強い人気を誇る「ソナチネ」まで、タイトルだけでも聞いたことがある人も多いのでは?

最新作「龍三と七人の子分たち」を含めた全17作品から、11作品をご紹介いたします。

1.記念すべき初監督作品「その男、凶暴につき」(1989年)

ダウンタウン松本人志が、北野映画で一番好きな作品として挙げているのが「その男、凶暴につき」。今でこそ、芸人であるまっちゃんや、品川庄司の品川祐など、芸人がメガホンを取るのは珍しくなくなったが、まさにその先駆者となるのがビートたけし。

0426-102 その男、凶暴につき

元々は、役者として出演予定だったたけしが、深作欣二監督の降板により自ら監督をする羽目に。名監督の誕生は、意外にも偶然からの産物だと言えます。

全編にみなぎるハードボイルド。

セリフが少なく抑えた演技から、北野武演じる刑事・我妻の、たった一人で組織へ立ち向かい、悪を撤廃しようと言うダンディズムを感じます。終盤のある名セリフは、電気グルーヴが曲の中でサンプリングとして使用するほど、インパクトが強い一言。

近年はテレビなどで規制が多く、バイオレンスシーンを敬遠されるようになった中、この「その男、凶暴につき」は、暴力は必要悪ではないのかと考えされられてしまう名作。

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2.キタノ映画の隠れた名作「あの夏、いちばん静かな海。」(1991年)

かの日本屈指の映画評論家・淀川長治氏が「日本映画で一番好きな映画」と評した「あの夏、いちばん静かな海。」。

北野映画にしては珍しい、真木蔵人演じる聾唖の青年と、美しい女性とのラブストーリー。

サーフィンを題材にした今作は、のちに「キタノブルー」と呼ばれる海が全編に登場する。名画座などで再上映されると、未だに満席になるほどキタノ映画の隠れた名作。

0426-104あの夏、いちばん静かな海。

3.キタニストが選ぶ傑作「ソナチネ」(1993年)

のちに「第54回ヴェネツィア国際映画祭」にて金獅子賞を受賞した「HANA-BI」への序章として語られるのがこの「ソナチネ」。

北野武監督作品の中でも、ベスト1と掲げる人も多い。また、「キタニスト」と呼ばれる世界の北野映画ファンを獲得したのもこの作品の影響が大きい。

ヤクザの抗争から始まった、死に向かっていく復讐劇がまるでジャン=リュック・ゴダールの映画のように、沖縄を舞台とした色彩豊かな映像美で繰り広げられる。北野映画の中では外せない一本。

0426-105 ソナチネ

4.青春映画の王道「キッズ・リターン」(1996年)

「俺たちもう終わっちゃったのかな?」「バカ野郎ぉ! まだ始まっちゃいねーよ!」という、映画を見たことがない人でも聞いたことがある名セリフで幕が下りる青春映画の傑作「キッズ・リターン」。

二人の青年がボクシングと出会い、一人は才能を開花し、一人は挫折していく。

ストーリーだけ見ると陳腐だが、オーディションで選ばれ無名俳優だった金子賢、安藤政信の溢れるほどの躍動感とリアリティは、まさにキタノ監督の手腕によるもの。まだ脚本家として売れる前の宮藤官九郎が、高校生役で出演しているのもご愛嬌。

タレントビートたけしを語る上で欠かせないのが1994年に起きたバイク事故。この事故後に初めて撮られた作品として、前作の「ソナチネ」が死をテーマにしていたの対して、バイク事故後のたけし自身の生死観が非常に反映されているラストシーンになっている。

0426-106 キッズリターン

5.ビートたけし監督による初コメディ映画「みんな〜やってるか!」(1995年)

北野武監督と言うブランド名を捨て、ビートたけし名義で監督を務めた意欲作「みんな〜やってるか!」。

たけし軍団のダンカンがモテない男性を演じ、ひたすらバカげたギャグのエピソードが続く。まさに深夜に放送されていた「北野ファンクラブ」や、たけしのオールナイトニッポンのファンならば、思わずニヤっとしてしまう一本。

日本語のデタラメな字幕に著名な字幕翻訳家である「戸田奈津子」というテロップが出たり、テレビでは放送できないような危ないネタや下ネタも、よくできた小ネタ集やオムニバス映画のようにすんなり観られるのは、やはりたけし監督の手腕によるもの。ビール片手に気楽に観るのにお薦めの一本。

0426-107 みんな~やってるか!

6.世界のキタノと呼ばれる金獅子賞受賞の名作「HANA-BI」(1998年)

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キタノブルーと呼ばれる海が映し出されたラストシーンで、圧倒的な存在感を見せる少女は、北野武の実娘である北野井子。セリフの少ない本作で、印象的に使われている点描画のすべては、ビートたけし自身によるもの。まさに、多彩な才能が垣間見える。

妻と逃避行するビートたけし演じる刑事。劇中、二人の間に会話はない。ラストの意味深な妻からのセリフは、歳を取ってから見返すと、色々と感じ方が変わるまさに映画的なシーン。日本映画ではなく、フランス映画のような余韻に浸れる一本。

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7.麻生久美子が熱演「アキレスと亀」(2008年)

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今や日本映画を代表する人気女優の一人、麻生久美子。彼女は主役に限らず脇役や助演での出演も多い。

この「アキレスと亀」では、柳憂怜演じる売れない画家・真知寿(晩年は北野武が演じる)を支える妻・幸子役(晩年は樋口可南子が演じる)。

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田口トモロヲ監督の青春映画「アイデン&ティティ」や、大根仁監督のヒット作「モテキ」など、「こんな優しくて美人な女性が彼女だったら」という、男性の理想のタイプを演じさせたら日本一の麻生久美子が、まさにハマリ役の、内助の功の妻を演じている。

この「アキレスと亀」では、DVDのパッケージなどが樋口可南子の方がフューチャーされているので、見落としがちだが、女性をあまり描かないキタノ映画にしては珍しく、純愛が描かれている。

0426-111 アキレスと亀

8.まさに下町のたけし「菊次郎の夏」(1999年)

映画を見ていなくても、CMなどでよく使用されているので、久石譲作曲の劇中曲は聞いたことがある人も多いのでは。

実の母親に会いに行く少年に付き添う、たけし演じるチンピラの中年。

いわゆるロード―ムービーなのだが、たけしらしい下町情緒溢れる人情味とペーソスが効いていて、泣かせるつもりではない演出なのに、終盤は切なさで胸を鷲掴みにされる。子供が主役なのもあり、映画人や、キタニストなどの人気は高くない今作だが、キタノ映画と言う枠組みを取り払っても、感動できる一本。

0426-112 菊次郎の夏

9.バイオレンス映画の集大成「アウトレイジ」(2010年)

「全員悪人」というキャッチフレーズどおり、バイオレンスシーンが多いためR15+指定を受けてしまった「アウトレイジ」。

北村総一朗、石橋蓮司、國村隼、三浦友和といった大物ベテラン俳優たちが、惜しみなく悪役を演じ、誰が本当の「悪人」なのか最後までわからない、実は頭脳ゲームを司った作品。

いつもは物静かな役が多い加瀬亮が、極悪なやくざを演じているのも見どころ。多彩なキャストによる娯楽映画としてヒットし、続編「アウトレイジ ビヨンド」も制作された。

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10.キタノ映画最大のヒット作「アウトレイジ ビヨンド」(2012年)

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北野武監督映画初の続編。前作のキャストに加え、西田敏行、松重豊らが仲間入り。

若手の組員を演じた桐谷健太、新井浩文は短い出演シーンながら、「キッズ・リターン」を思わせる演技に、スピンオフ作品が見たいと感じさせる。

たけし演じる元ヤクザの組長・大友の悪人ぶりも健在。

最後までやんちゃすぎる大友に、「また続編があるのでは」と勘繰ってしまう。北野映画の定番作品として、これからも撮り続けて貰いたい一本。

0426-114 アウトレイジ ビヨンド

11.「座頭市」(2003年)

「座頭市」と言えば、昭和の名優勝新太郎の代表作。北野武監督初の時代劇は、勝新の「座頭市」を、鮮やかにキタノ映画にアレンジ。なんといってもこの映画の見どころは、たけし軍団の大番頭的ポジションのガダルカナル・タカ。

北野作品の「3-4X10月(さんたいよんえっくすじゅうがつ)」(1990年)でも、男気のあるチンピラ役を見事に演じ切っていたが、この「座頭市」では、殿こと北野武の演技を上回る存在感で、博打好きな遊び人を演じている。

この映画最大の魅力はなんといっても、出演者総勢で踊るタップダンス。そこでも、ガダルカナル・タカが昭和の芸人のような佇まいで、渋くタップを決めている。

草食系だのもてはやされている昨今、たけし軍団のような骨のある男性達をまとめるタカさんの、下町情緒あふれる色気が見られるのがこの「座頭市」だ。

0426-116 座頭市

 

今回紹介できなかった日英共同制作の「BROTHER」(2001年)、 今や旬の俳優となった西島秀俊が主演の「Dolls」(2002年)、京野ことみの体当たりの演技が光る「TAKESHIS’」(2005年) など、魅力ある作品の数々を、今回、新作「龍三と七人の子分たち」の公開に合わせて、振り返ってみるのも良いかもしれません。

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